カフェやバーで流れている、あの落ち着いたピアノ。
派手ではないのに耳に残る。あの雰囲気を出すには、特定の技術の組み合わせがあります。この記事では、ラウンジスタイルを構成する5つの要素を整理します。
ラウンジスタイルとは
ジャズ・ボサノバ・ブルースの要素を取り入れた、落ち着いた演奏スタイルです。
主張しすぎないのに、ちゃんと聴かせる。そのバランスが命
技巧を見せるスタイルではありません。空間になじみながら、それでいて安っぽく聞こえない。 その加減を作るのが、これから挙げる技術です。
① ボイシング:ルートを手放す
最も効果が大きいのがここです。
普通のコードは、ルート(根音)を含んで押さえます。ラウンジスタイルでは、右手からルートを追い出します。
- C → Cmaj7 → Cmaj9 と発展させる
- ルートは左手のベースラインが担当する
- 右手は 3rd・7th・テンションで構成する
これが ルートレス・ボイシング です。例えば Cmaj7(C・E・G・B)から、ルートを抜いて9thを足し(E・G・B・D)とする。
ルートを手放すと、右手が自由になります。 同じ音数でも、より多くの色を配置できる。ジャズピアノの響きの基礎がこれです。
② 左手:リズムを担当する
左手には3つの選択肢があります。
ウォーキングベース — 4分音符でベースラインを歩かせる。1オクターブ以内で動かすと、シンプルなのに流れが出ます。スイング感の源です。
シンコペーション — 「タッ タータ タッ」と跳ねるリズム。ブロックで押さえるだけでなく、細かく刻んで動きをつける。
アルペジオ — 和音を分解して流す。低音から高音へ向かう形が基本ですが、順番をランダムにすると即興感が出ます。
曲の場面によって使い分けると、単調になりません。
③ リハーモナイズ
ありふれた進行を、ジャズ寄りに置き換えます。
| 元の進行 | ラウンジ版 |
|---|---|
| C | Cmaj7 |
| Am | A7 |
| F | Dm7 |
| G | G13 |
代理コードの考え方も使えます。G7 の代わりに Dm7 を置くなど、同じ役割を果たす別のコードに差し替える。
メロディは変わらないのに、空気だけが変わる。 これがリハモの効果です。
④ 右手:滑らかさと装飾
ラウンジスタイルの右手は、力を抜くことが最重要です。
叩きつけるように弾くと、それだけで雰囲気が壊れます。スラーやグリッサンドを使って、線を繋げるように弾く。
そのうえで装飾を足します。
アプローチノート(経過音) — 目的の音の直前に、半音上か下の音を挟む。メロディが E なら、その前に D# を置く。たったこれだけで、フレーズが「こなれて」聞こえます。
トリル — 細かい連打を軽く入れる。使いすぎると鬱陶しいので、フレーズの終わりなどにさりげなく。
⑤ 段階的に発展させる
実際の曲に適用するときの手順です。
- まずシンプルなコード進行で通す
- ボイシングをルートレスに変える
- 左手にリズムを与える
- リハモを1〜2箇所入れる
- 右手に装飾を足す
いきなり全部やらないこと。 一度に変えると、どの要素が効いているのか分からなくなります。1つずつ足して、そのたびに聴き比べてください。
こんな方におすすめ
- ジャズピアノに興味がある方
- ピアノ弾き語りの表現力を向上させたい方
- カフェやバーで流れるような演奏をしてみたい方
- ソロピアノのレパートリーを増やしたい方
どこまで崩すか、どこは残すか。この加減はご自身の好みと弾きたい曲によって変わります。ピアノ弾き語り教室では、目指す方向を伺ったうえで、必要な技術から順に組み立てていきます。