「コードは押さえられるのに、進行がいつも単調になる」
この悩みを持つ方の演奏を聴くと、コード自体は間違っていないことがほとんどです。C も Am も F も、正しく鳴っている。それでも平坦に聴こえる。
理由は、コードとコードの「あいだ」が空いているからです。
ゴスペルらしさは、和音そのものではなく通り道にある
動画では Shaun Martin のスタイルを題材に、パッシングコード・分数コード・ペダルノートという3つの手法が出てきます。バラバラの技に見えますが、3つとも「到着点」ではなく「通り道」の処理です。
| 手法 | 何をしているか | 単調さがどう消えるか |
|---|---|---|
| パッシングコード | 2つのコードのあいだに通り道を1つ挟む | 移動が「跳ぶ」から「歩く」に変わる |
| 分数コード | 和音はそのままで、ベースだけ別の音にする | 上が同じでも下が動き、進行が続いて聴こえる |
| ペダルノート | トップの音を固定したまま、下を動かす | 変わらない音が軸になり、変化が際立つ |
コード進行を「点」として覚えていると、この3つは思いつきません。点と点のあいだにも操作できる余地があると分かった瞬間に、使えるようになります。
「止める」と「刻む」は、逆方向から同じことをしている
面白いのは、パッシングコードとペダルノートが正反対の動きだということです。
- パッシングコード … あいだを細かく刻んで、移動を滑らかにする
- ペダルノート … 1音を止めて動かさないことで、他の変化を目立たせる
止めれば動いた音が際立ち、刻めば移動そのものが聴こえる。どちらも「あいだ」を設計する操作です。
どちらを使うかは場面次第ですが、あいだに何もしないという選択が一番平坦だという点は共通しています。
マイナーⅡ-Ⅴ-Ⅰとセカンダリードミナント
動画では Bm に向かう進行として C#m7♭5 → F#7 → Bm7 が出てきます。B マイナーから見ると、そのまま ii - V - i の並びです。
マイナーキーの Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ は、ii が m7♭5 になるのが特徴です。ここが分かっていると、初めて見る進行でも「これは Bm に向かっている途中だ」と読めるようになります。
さらに E7 のようなセカンダリードミナントを挟むと、行き先がもう一段はっきりします。セカンダリードミナントは、目的地を指差す矢印のようなものです。矢印が増えるほど、進行に方向が生まれます。
練習の進め方
いきなりゴスペル風のフレーズをコピーしようとしないでください。手順があります。
- 4小節の簡単な進行を用意して、まずは素直に弾く
- コードとコードのあいだに、半音で通り道を1つだけ入れてみる
- 1か所だけベース音を変えて、分数コードにしてみる
- トップの音を1音だけ固定して、下だけを動かしてみる
- 最初のバージョンと弾き比べる
5番目を必ずやってください。自分の耳で差を確認しないと、何が効いたのか分からないままになります。1回の演奏で全部やる必要はありません。1曲に1〜2か所で十分効きます。
「単調なのはコードのせいではなく、あいだに何もしていないからです。」
目次
00:00 オープニング|Dメジャーペンタを使ったフレーズの紹介
01:07 Bmに向かうⅡ-Ⅴ進行の実例
02:11 ペダルノートを活かしたキャッチーなライン
03:15 マイナーⅡ-Ⅴ-Ⅰとパッシングコード
04:24 セカンダリードミナントとダブルドミナント
06:40 ゴスペル的コードワークの特徴
07:47 まとめ
こんな方に見てほしい
- ゴスペルやR&B風の響きを演奏に取り入れたい方
- 単調なコード進行から抜け出したい方
- パッシングコードや分数コードの使い方に興味がある方
- ピアノアレンジをより音楽的に響かせたい方
- 作曲や弾き語りにプロっぽい進行を取り入れたい方
この動画で学べること
- Dメジャーペンタをベースにしたキャッチーなフレーズ作り
- Bmに向かう Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ(C#m7♭5 → F#7 → Bm7)の使い方
- A♭7などパッシングコードを挿入する発想法
- E7を用いたセカンダリードミナントの応用
- ペダルノート(トップノートを固定した響き)の活かし方
- 現代ゴスペルでよく使われる分数コードの処理
ピアノ弾き語り教室では、コード理論からアレンジ・作曲・弾き語りまで、目指すスタイルに合わせてマンツーマンでレッスンしています。「ゴスペルっぽい進行を自分の曲で使いたい」というご相談も歓迎です。