「ジャズっぽい響きにしたいけど、テンションコードは指が足りない」
この悩みの前提には、洒落て聴こえるのは音が多いからだという思い込みがあります。
でも、John Legendの『Ordinary People』で使われているのはたった3音です。しかもそのうち1音は重複しています。
3音のうち、1音は「重複」
このボイシングの仕掛けは、同じ音を一番下と一番上に置くことにあります。低い位置に1音、そのオクターブ上に同じ音、そしてあいだに1音。
つまり、鳴っている音の種類としては2つしかありません。
| 位置 | 役割 | 何をしているか |
|---|---|---|
| 一番下の音 | 枠 | 和音の底を決める |
| 一番上の音 | 枠(下と同じ音) | 輪郭を閉じる |
| 真ん中の音 | 色 | この1音で響きの性格が決まる |
外側の2つが枠を作り、その中に入った1音が色になる。これが「4音に聴こえるのに実は3音」の正体です。
耳は和音の「一番上」と「一番下」を強く聴いている
なぜ重複させるとうまくいくのか。
和音を聴くとき、耳は一番上の音と一番下の音をとくにはっきりとらえます。中に挙まれた音は、相対的にやわらかに聞こえます。
その一番目立つ二つを同じ音にすると、和音の輪郭がはっきり決まります。
音を増やして濁らせるのとは逆の発想です。
テンションを足しても洒落て聞こえないことがありますが、多くはこの輪郭があいまいなままだからです。中身を豊かにする前に、外側を決める。順番が逆になっていることが多いと思います。
前回の「ルートレス」と同じ思想の延長
以前、ルートレスヴォイシングの記事で「3rd と 7th の2音でコードは成立する」という話をしました。
今回の3音ボイシングも、音の種類としては2つです。やっていることは同じで、
- ルートレス … 何を抜くかを決める
- 今回 … 残した音をどこに置くかを決める
という違いだけです。抜いて空いた場所を、今度は配置に使う。セットで覚えると強いです。
同じ考え方が、別のコードでもそのまま使える
動画では Key = F の進行の中で、BbM7 で見つけたこの形を、EbM9 や FM7 でも同じやり方で置き直していきます。
ここが大事なところで、覚えるのは押さえ方ではなく手順です。手順で覚えていれば、初めて見るコードでもその場で作れます。
動画の 06:41 からは、その見つけるまでの思考過程がそのまま話されています。結果の形だけを真似るより、ここを見ると応用が効きます。
練習の進め方
- いつも弾いている曲から、M7 のコードを1つ選ぶ
- そのコードで、下と上に同じ音を置く(オクターブ離して)
- あいだに入れる1音を、いくつか試して聴き比べる
- 一番ピンときたものを採用し、同じ手順を次のコードでもやる
- 進行全体を通して弾いてみる
3番目がこの練習の中心です。正解を教わるのではなく、聴き比べて自分で選ぶ。選んだ経験が残らないと、別の曲で同じことができません。
「音を増やす前に、いまの音をどこに置くかを試してみてください。」
目次
00:00 オープニング|ジャズっぽいのに実は簡単な理由
01:08 Ordinary People のコード進行解説(Key: F)
02:13 BbM7 で使われている3音ボイシングの正体
03:22 EbM9 でも同じ考え方が使われている理由
04:30 実際のピアノ演奏で音を確認
05:37 ピックアップフレーズとメロディとの関係
06:41 ボイシングを見つける思考プロセス
07:45 FM7 での応用と美しさの理由
09:11 まとめ|神ボイシングの本質
10:19 ポップス・弾き語りへの応用ポイント
こんな方に見てほしい
- ジャズっぽいコードに挑戦したいけれど、難しさで止まっている方
- ポップスや弾き語りで「もう一段階上の響き」を出したい方
- テンションを増やす以外の方法を知りたい方
- John Legend / R&B / ネオソウル系のサウンドが好きな方
- コードを「覚える」より「音を選ぶ感覚」を身につけたい方
この動画で学べること
- ジャジーに聴こえるボイシングの正体
- 4音に聴こえて、実は3音で成立している考え方
- 同じ音をボトムとトップで重ねる理由
- 普通のコード進行が一気にプロっぽくなる仕組み
- 弾き語りですぐ使える実践アイデア
ピアノ弾き語り教室では、ボイシングやアレンジを知識で終わらせず、実際の曲で使えるところまでマンツーマンでお付き合いしています。