譜面に「CM9」と出てきたとき、押さえるまでに何秒かかりますか。
構成音を下から1つずつ数えて、指を並べて、やっと音が出た頃には次のコードが来ている。テンションコードで手が止まる原因は、実は指の回らなさではありません。全部の音を弾こうとしていることそのものです。
この記事では、プロが当たり前に使っている「ルートレスヴォイシング」を、なぜそれで成立するのかというところから整理します。
ルートは「弾かなくても聞こえている」
ルートレスヴォイシングは、その名の通りルート(根音)を省いて押さえる方法です。「一番大事な音を省いていいの?」と思うところですが、理由は2つあります。
1つは、ルートは他が鳴らしていること。バンドならベースが、弾き語りなら左手が担当しています。同じ音を右手でもう一度抱え込む必要はありません。
もう1つは、ルートはコードの性格を決めていないことです。ルートが決めているのは「このコードの名前は C です」という住所だけで、明るいのか暗いのか、落ち着くのか先へ行きたがるのかは、別の音が決めています。
コードの性格を決めているのは 3rd と 7th
その「別の音」が 3rd と 7th です。この2つは、それぞれ別のスイッチになっています。
- 3rd は明暗のスイッチ … 長ければメジャー、短ければマイナー
- 7th は種類のスイッチ … 長ければメジャー7、短ければドミナント系
| コード | 3rd | 7th | 響きの印象 |
|---|---|---|---|
| CM7(メジャー7) | 長3度 | 長7度 | 明るくて浮遊する |
| C7(ドミナント7th) | 長3度 | 短7度 | 明るいが解決したがる |
| Cm7(マイナー7) | 短3度 | 短7度 | 暗くて落ち着く |
表を横に見ると分かる通り、3種類を見分けているのは 3rd と 7th だけです。ルートも 5th も、3つとも共通していて区別に使えていません。
だから、2音でコードは成立します。手抜きに聞こえないのではなく、情報を持っている音だけを残しているからです。
省くのは、足すための場所づくり
ここがルートレスヴォイシングの一番面白いところです。
ルートを省くと、指が1本余ります。音域も空きます。そこに何を置くかという話になった瞬間、テンションが「余分な難しい音」から「空いている場所に入れる音」に変わります。
ルートを抜いて終わりではなく、空いたところにテンションを入れるために抜きます。
たとえば CM7 を ミ・シ の2音で押さえていたところに レ を足すと、それだけで CM9 の響きになります。指は3本。構成音を数え直す必要もありません。
低い音域で音を重ねると響きは濁りやすいので、ルートを外して和音が中音域にまとまること自体も、すっきり聴こえる理由になっています。
進行の中では、片方が動かない
ルートレスが本当に楽になるのは、コード単体ではなく進行の中に入れたときです。Dm7 → G7 → CM7 の 3rd と 7th を並べてみます。
| コード | 3rd | 7th |
|---|---|---|
| Dm7 | ファ | ド |
| G7 | シ | ファ |
| CM7 | ミ | シ |
縦に見るとバラバラに見えますが、進行の順に追うと規則が見えます。
- Dm7 の ファはそのまま残り、G7 では 7th に役割が変わる。ドは半音下がってシ
- G7 の シはそのまま残り、CM7 では 7th になる。ファは半音下がってミ
つまり、コードが変わっても片方は動かず、もう片方が半音下がるだけ。手の形はほとんどその場で完結します。
これは、共通音を残してコードをつなげるという考え方の、テンションコード版です。三和音でやっていたことを、3rd と 7th だけに絞ってやっていると考えると分かりやすいと思います。
練習の進め方
- 好きな曲のコード譜を用意し、すべてのコードを7th まで付けて考える
- 各コードの 3rd と 7th が何の音かを、声に出しながら確認する
- 右手はその2音だけを押さえる。左手はルート。これで一周弾けるようにする
- 慣れてから 9th を足す。全部のコードではなく、長く伸ばすところから
順番を逆にしないことが大事です。先にテンションを足してしまうと、どの音が響きを作っているのかが分からなくなります。まずは2音で曲を成立させる。それができてからの足し算です。
「テンションが押さえられないのではなく、抜く音を決めていないだけです。」
目次
00:00 オープニング
00:19 ルートレスヴォイシングとは?
02:49 基本の考え方
03:52 3種類のルートレスヴォイシング|メジャー7・7th・マイナー7
05:58 コード進行で実践
09:05 9th を加えた応用
13:58 まとめ
こんな方に見てほしい
- テンションコードが難しいと感じている方
- コードをもっとおしゃれに響かせたい方
- ジャズやポップスのコードワークを学びたい方
- ピアノ弾き語りの伴奏力をレベルアップしたい方
この動画で学べること
- ルートレスヴォイシングの基本的な考え方
- 3rd・7th を使ったコードの作り方
- メジャー7、7th、マイナー7 の押さえ方
- コード進行での実践方法
- 9th を加えてさらに響きを豊かにするコツ
ピアノ弾き語り教室では、生徒さん一人ひとりの目標に合わせてカリキュラムを作っています。「この曲をもっとおしゃれに弾きたい」といったご相談も歓迎です。